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2006年11月27日(月)  美しき音楽と時の流れの過ぎ行く様に…
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
プログラムB
11月7日於ミューザ川崎シンフォニーホール
モーツァルト:交響曲第39番変ホ長調 K543
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調OP.92

その夜の巨匠=コラウス・アーノンクールは、能舞台に出てくる役者の様な少し気難しそうな面持ちに、人生を見据えるするどい眼光に、きりっとした口元で舞台に足を運び、やおら、キュヒル氏の前に足を止め握手した。
キュヒル氏は尊敬の中に親しみをこめ、お互いにやわらかい笑みを交わした。その情景に暖かい空気がホールに流れた。
今夏のザルツブルグ音楽祭に於いて、ウィーン・フィル・ハーモニーのモーツァルト演奏の5作品中2作品を10回も指揮している事を見ても、いかにメンバーの方々に愛され、信頼と尊敬の中、両者が良い関係を育み発展してきた事を直感した。
オーケストラの本領発揮のためには、指揮者と楽員の心と技が共鳴し、聴衆はその共有空間の中で、「音楽」という共通言語を媒体として、音の放射の中で魅了され、三位一体となって、音楽の持つ霊的とも言うべき一致の瞬間を享受する至福の邂逅に開花されるのではないでしょうか?
「芸術は全世界の人間のきずなである。」とバレンボイムは言っている。国籍、宗教、文化が異なっても、言語以上のコミュニケーション能力を発揮して語り、人々を結ぶ。全世界の人々に愛されているモーツァルト。その中でも「交響曲第39番変ホ長調K543」は、その具現化にふさわしい一曲である。
マエストロ・アーノンクールの指揮棒から紡がれる一音、一音はいつものウィーン・フィル独特な音色の響きで横溢され、ミューザ川崎というすばらしいホールに、その美しい澄みきった音色をくっきりと浮かび上がらせていた。やわらかい弱音は、空中に美しく舞い、残響となって天上に奏される。いかにも自然体で香り高く気品がある。情に流される事なく、本質を見据え、どのパートも知性と感性のバランスが良く、しかも暖かい。
古楽の指揮者としてのパイオニヤであるマエストロは、ゆるやかな間のとり方でエレガントで趣き深く、気高く、心に静謐さを秘めている事を窺わせた。
信頼する両者はその手法を熟知し、指揮は対話となり、神の御前に献上される音楽の花束になった。
形而上的なモーツァルトの音楽は、ただ単に才能ある人間のなせる技ではなく、神の特別な恩寵に恵まれ、その意思によって作曲されたと思う。
時代や国を越え、老若男女を問わず、聴く人々に喜びを与える。その音楽を通して、我々は時に神と対話しインスピレーションやメッセージを受ける。まるで教会でミサに授っといる様である。心は癒され、明日に生きる希望を与えられ、無の心に導かれ、芸術の中にあって、人生の真・善・美を内感させるものが在る。

近松の言う「虚実皮膜」の間に、芸術=人生の真髄を体感すべく、幻想と現実の狭間にさまよう。インジビブルな音楽や文学の精神性は、視覚的なものよりリアルに感性に訴える。時には人を哲学的な思考の森に誘う。
また、身体的には、音楽を聴くことによって前葉頭が刺激され、ホルモンの分泌を促し、ストレスを和らげ、リンパや血流の流れを良くし、アンチエイジングなど健康面でも効果的である。医師である息子達も「若さを保ち、健康で元気の素は、音楽である。」…と快く上京することを勧めてくれる。
ウィーン・フィルのメンバーの方々が、いつまでもお若く、お元気なのも頷ける。
マエストロ・アーノンクールもご高齢ではあるが、大変お元気で情熱的な指揮振りであり、健康に留意なされ、もっと度々来日なさって、その音楽に接する事を望んでいる。

この日の二曲目は「ベートーヴェン交響曲第7番」で、スケールの大きな、精緻な音の作りに貫かれていた。
この時期のベートーヴェンの移ろいゆく健康の不安や人生の苦悩、そして葛藤と逡巡が精神の彷徨を伴い、その苦しみを心の高みに昇華し、運命に対する受容と諦念となり、生きる事へのエネルギーを鼓舞し、力強く、激しく、オーケストレーションは繰り返され反芻する。魂のひだに重く響く交響曲で、私は文学を読み解くような気持と、深い音と対峙する。
年々歳々、同じ音楽を聴いても、歳の経過と共に思い致す事も変化するものである。
この夜、私の胸中に去来していたのは、あのベームの第7番であった。月日の流れの速さは驚くばかりである。
この夜の演奏も弦は言うに及ばず、金管、木管など全て渾身の力と技でマエストロに応え、見事な演奏であった。
マエストロは昨年「京都賞」授賞のため来日しているが、ウィーン・フィルとの来日は26年振りということです。
今迄アーノンクールといえば古楽、そしてウィーン・コンシェルト・ムジクスというイメージでしたが、彼は「20世紀半ば迄のあらゆる時代の最高傑作を照準にして取り組んでいる」…と言っている。古い方向ばかり凝り固まっているのではなく、音楽全般に強い関心を持っているということだ。
それを如実に物語っているのが、グラーツで毎年催されるシュティ・リアルテ音楽祭です。その近郊に建つ、シュタインツ城は彼のご先祖が住んでいたということですし、伯爵夫人である彼の母の実家であり、また、バロック建築で音響の素晴らしいシュタイツァー教会は彼のお気に入りです。
ここではモーツァルトのオペラを初め、ベートーヴェンの全交響曲も演奏されていますし、2007年の音楽祭では、ハイドン、シューベルトも視野に入っているということです。

“時よ止まれ”…と思いつつも、終演を迎え、会場を後に…。
やおら歩を進めていた時、なんと、キュヒル先生の奥様にお声を掛けられてびっくり。令夫人はいつもチャーミングな笑顔の美しい方で、先生を蔭から支えていらっしゃり、日本とオーストリアの友好に貢献しておられるおひとりです。
先生の今後のスケジュールやお嬢様方の事を伺い、ウィーンのお宅で御家族と最初にお目にかかってから20年余り、美しく立派に成長されたお嬢様方に、きっとキュヒル先生もあの人なつこい御目を細めていらっしゃるのでしょう。・・・などと想いをめぐらせ、時の流れの過ぎ行く様に嘆息−。
気をとり直して、伊豆の人となりました。
喜心と感謝の中に。

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