伊豆 下田 蓮台寺温泉/クアハウス石橋旅館/創業130余年の老舗旅館/(財)日本クアハウス協会会員
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2006年07月24日(月)  今宵はなんて楽しい日 オペラそしてサッカーと・・・
ヨーロッパの6月は、緑あふれ美しい季節、日は長く観光にもスポーツにも適した時期です。
特に、W杯サッカーが開催されたドイツの黒い森周辺のバーデン・バーデンは、中高年の人達やマダムには人気エリアで、若者達で混み合うサッカー場周辺を避けて、バーデンで入浴、散歩、グルメそして観劇など楽しんだ事でしょう。

さて、W杯サッカーはイタリアが優勝を飾り歓喜とほろ苦さを残し、宴は終演した−。

ベッカムのシュートに喜び、数々の見事なパフォーマンスのクローゼに驚き、中田の引退に胸を突かれ、おまけにジダンの例の件である。

中田のグランドでのあの姿に、何かは予感していたとは言え、大きな決断であった。彼の空虚感と孤独感からの苦悩と逡巡は、彼を傷付けストレスとなったのであろう。しかし、彼にはそれらを乗り越える力があればこそ、与えられているのだと思う。彼の意志力と実力、そして心の成熟さは、自ずと結果としてついて来るであろう。

予期せぬ出来事は人生につきもの・・・とは言え、まるでオペラのような展開のサッカーであった。

ある作家は<サッカーの本質を見た>とジダン事件を表現していた。サッカーの中に、政治、民族問題、経済情勢などが垣間見えてくる。個々の選手の人格やら自出に至るまで、又、国家成立の過程に至る歴史と民族のアイデンティティまで考える機会となった。技などプレーにはペナルティがあるが、言質にはそのリスクがその場では反映されない。今回の一件は教育現場や家庭で話し合うチャンスを与えられ、事々は反面教師となり、様々な教訓となった。

高ぶる気持ちを抑え込み、眠りについた日々の6月は、私にとってはオペラ鑑賞の日々でもあった。
上旬はニューヨークからメトロポリタン歌劇団、中旬はイタリアのボローニャ歌劇場を楽しみました。

さて、今回は6月14日、東京文化会館「イル・トロヴァトーレ」を記します。

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲
ボローニャ歌劇場・同合唱団
指揮 カロロ・リッツィ
演出 ポール・カラン

当日、会場入りし、まず目に飛び込んできたのは、紗幕に青白い大きな月のシルエット。このオペラをシンボライズする道具立てとしての演出手法である。イタリア・オペラでは「ランメルモールのルチア」や「ルチア」など、月にまつわるモティーフを、上手にイメージ化して演出しています。

何か不可解な事が起こる満月の夜、このオペラのテーマは憎悪と愛、嫉妬と復讐など、単なる情熱のオペラではありません。人間の心の表裏、心の闇、原罪ゆえの人間の弱さ、悲しさなどを読み解き、文学、歴史、民族特性を合わせて聞くと、又数倍楽しめます。瞬時に知識を導引し、心を澄まし、耳を傾けて聞くと、オペラが心に入ってきます。心の闇をあやつっている象徴としての月の神秘を、照明、色彩、衣装で人物と物語の構成を表現しています。

イタリア・オペラは造形力にすぐれ、抜群のセンスで、どの演目も超一流の歌手を
揃えて組まれています。私にとってのオペラは、人生の喜び、楽しみ、生き甲斐であって、心の癒しと健康に取っての温泉と同様、私の人生を形成するエレメントであることは事実です。

オペラ設定は十五世紀のアラゴンとビスカーニャです。イベリア半島の上部、ピレネー山脈からスペイン越え辺りの地域です。

主要登場人物
レオノーラ(公爵夫人付女官) ダニエラ・デッシー
マンリーコ(吟遊詩人、実はルナー伯爵の弟) ロベルト・アラーニャ
ルーナ伯爵(アラゴンの貴族) アルベルト・ガザーレ
アズチェーナ(ジプシーの老婆) マリアンネ・コルネッティ

以上の通りの豪華な顔ぶれです。

ヴェルディ中期の三大傑作「椿姫」、「リゴレット」、「イル・トロヴァトーレ」は、世界的にも人気のあるオペラです。
初演は1853年のローマで、150年余り前の丁度、黒船来航のあの時代の頃です。当時のエンターテイメントの少ない時代に、オペラもサッカーも、どんなにか人々を楽しませ、喜びを与えた事でしょう。ボール1個で達成感や躍動感を味わえ、教育的にも大切なものを学べます。
一方、オペラは大人の娯楽として無論の事、社交の場であり、情報拾集や時に出合いを演出する空間でもありました。

昨今では高額チケットの故か、中高年層で埋め尽くされ、老人会?・・・と思ってしまいます。ウィーンの様に、学生券で安価に音楽に接する機会を与えられたら幸いに思います。豊かな気持や詩心が美しいメロディーと共に醸成され、言語を大切にし、情操教育の一貫にもなる事でしょう。

さて、簡単なあらすじを御案内致しましょう。
 
■第1幕(決闘)

15世紀のアラゴン、先代ルーナ伯爵には2人の息子がいた。
兄は現伯爵のルーナ、弟は行方不明である。

公爵夫人付女官レオノーラに思いを寄せる兄のルーナ伯爵、しかし、レオノーラは吟遊詩人のマンリーコ(実はルーナ伯爵の弟)に恋している。

それを知ったルーナ伯爵とマンリーコは決闘になる。
レオノーラは戦いで、マンリーコは死んでしまったと誤解する。

■第2幕(ジプシーの女)

ロマ人のアズチェーナの母は、昔、赤子だった先代伯爵の弟君に、呪いをかけた疑いで火刑にされた。

その際、娘のアズチェーナは、母に対する復讐のつもりで、伯爵の弟である赤子を火に投げ込んだつもりが、間違って我が子を火に投げ入れてしまったのだ。

その後、アズチェーナは現伯爵の弟である赤子マンリーコを自分の子として育ててきた。

一方、レオノーラは決闘で愛するマンリーコは死んだ・・・と思い込み、修道院に入る決意をする。伯爵はその事を知り、レオノーラの略奪を計画し修道院に行く。

そこに、マンリーコが現れ、レオノーラを連れ出す。

■第3幕(ジプシー女の息子)

伯爵の陣営では戦い準備、そこに息子マンリーコを探しに来たアズチェーナは捕まり、引き立てられる。

マンリーコの母と知った伯爵は、彼女をおとりにして、マンリーコを誘き寄せる。

しかし、マンリーコとレオノーラは結婚式を挙げようとしている。そこへ、母が火刑になるという知らせに飛び出して行く。

■第4幕(処刑)

囚われ人となったマンリーコと母、塔の下では救出の為、レオノーラが自分の身体と引き換えに、マンリーコの命ごいを伯爵にする。

伯爵は自分のものになると喜び承知、しかし、レオノーラはマンリーコに操を守る為、毒を飲む。

それとも知らずマンリーコは、レオノーラが伯爵に身を許したと誤解し、その不貞を責める。

しかし、毒を飲んだと知った時は、既に手遅れで、レオノーラはマンリーコを熱愛しながら死んで行く。

伯爵は怒り、マンリーコを処刑、それを知った母、アズチェーナは<あれは、お前の弟だった>・・・とわめき叫ぶ。

<復讐は終った>・・・と天を仰ぎ絶叫するロマーニャの老女の勝ち誇った態度。

伯爵は呆然として立ち尽くし、事の真相に驚愕し、歎き悲しむ中、<復讐は終った>・・・という叫び声とクライマックスの響きが、空しく劇的に鳴り渡る。

以上があらすじの要約です。

オーケストラのおどろ、おどろしいティンパニーの連打に続いて、華やかなファンファーレ、短い印象的な前奏に躍動する旋律美を象徴する響きは、いつもながらのイタリアオペラらしい音の流れであった。

その日のオペラの出来は、主役の第1声を聞いて大体類推出来るが、最初から最高の状態に調子を持っていく為に、楽屋でも声を暖めて備えます。

この夜のアズチェーナ役のコルネッティの出来がすばらしい。なめらかに転がしながら、この暗いイメージの因縁話を説得力ある演技と迫力、そして低音を効かせて、難曲を表現、影の主役であった。

マンリーコ役の美男のアラーニャーも情熱的にロマンティックに運ばせ、暖まった声で良く響いていた。

人間の声は楽器よりデリケートで、身心共に健康管理が必要とされます。今回、オフ・ステージから移動しながら歌う演出が多用されていたが、立体的で効果的であった。

「私の心は嫉妬の為に」は、アラーニャー、デッシー、ガザーレの三重唱の掛け合いで、テノールとソプラノはハイCで慣例的に歌われ、ヴェルディらしい旋律と躍動感で会場を沸かせた。

合唱曲として有名なジプシーの仕事歌「アンヴィル・コーラス」は、単純に陽気に歌うのでなく、放浪の民としての宿命的な悲しさ、やるせなさを表現し、聞く人の心に訴える。

バック・コーラスがすばらしいとソロの部分がより栄えて楽しめます。ロマーニャの老女の歌うセリフが又面白い。

要約すると・・・
<おいらはジプシー、空が家の屋根なのさ・・・ おいらが行く処、どこでもおいらの故郷さ・・・>と大空を仰ぎ、ゼスチュアたっぷりに歌うロマーニャの老女。

次にアズチェーナ歌いの真価が問われる最大の聴かせどころの「災は燃え」も、テーマである復讐を説得力を持って、呪わしく、思わず首を振ってしまう話の展開を、魔性的に、災に焙られ、胸に潜む復讐をたっぷり表現。

前半のリュート奏でる叙情的な満月の夜のロマンティック性に比して、赤子を取り違い、火に入れるという呪わしく恐ろしい因縁話のオペラで、歌曲も物語の展開も面白い。

舞台の造形力、色彩感覚、衣装とセンスの良い感性はイタリアオペラの真髄を呈している。今回のルーナ伯爵のガザーレは前回の「リゴレット」が好評で、その理知的で美しい声の響きで、見事なバリトンを聞かせた。

デッシーは魅力的な容姿と声の持ち主で、レオノーラ役をリリックとドラマティックな部分を上手に使い分け、愛の為なら死ぬ強さと、恋する女を声楽的にも演技的な面でも、プリマとして、<恋はバラ色の翼に乗って>まで歌った。

アラーニャの<ああ、愛しいわが恋人よ・・・>から<見よ、恐ろしい災を>まで、甘く、時に激しく、ハイCで高らかに華ある容姿から繰り出される高温を轟かせ喝采を受けた。

歌手として冥利に尽きる瞬間である。

オペラは長時間に及ぶ事が多く、お腹がすきます。ウィーンでは「ツェムリンスキー」というグラーベン通りのサンドイッチ屋で、ちょいと一口サンドをつまんで出掛けた。

幕間には、「ベリーニ」というシャンパンオレンジとホテルザッハ特製のカナッペを戴くのが楽しみで好きであった。

ボローニャ歌劇場では「フォワイエ・ロッシーニ」でお食事が予約出来るそうで、オペラと食るが楽しめて羨ましい限りである。さすが美食の町、ボローニャで「劇場で晩餐を!」という事なのでしょう。

この「イル・トロバトーレ」は「マクベス」や「オテロ」と同様、人間の嫉妬、原罪を持つ人間の弱さとあわれ、どうする事も出来ない人間の業など、苦悩と世の不条理はオペラだけの世界だけではなく、サッカーでも、現代社会のあらゆる場面に表出する事象である。

人の心の奥底に潜むχに、あの頭突きの場面を重ね合わせ、今改めて、人間の弱さにあわれを感じている。

そんな私の心を癒してくれたのは、合唱「ミゼレーレ」(聖書の詩篇)で、オペラの中で歌われた、<主よ、あわれみたまえ・・・>と教会で良く唱える清らかな美しいハーモニーで、心に静かにくり返し、沈殿していく響きが、心に残響として深く刻まれた。

クアハウス石橋旅館 女将

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